(前回の続き)
記憶に罪はない
「記憶に邪魔されずに未来を切り開く」ってさっき話したけど、記憶の名誉のためにいうと、記憶に張り付いて離れないのは"自分が自分だと思ってる自分"のほうであって、ホントのことをいえば、記憶そのものには何の罪もないんだよ。
「何を可笑しな話してるの?」って思うかも知れないけど、記憶ってのは肉体に備わった機能の一部であって、人間の本体である生命意識とはハッキリと切り分けて見るべきもんなんだ。
そのことをハッキリと認識するためには、記憶と脳の関係を紐解いてみるのがいい。
そのためにはまず、次の話を読んで大筋を掴んでほしい。
シナプスとは、神経情報を出力する側と入力される側の間に発達した、情報伝達のための接触構造である。最も基本的な構造はシナプス前細胞の軸索末端がシナプス後細胞の樹状突起に接触しているものである。シナプスには大別して化学シナプス chemical synapseと電気シナプス electrical synapseがあり、出力する側の細胞をシナプス前細胞、入力される側の細胞をシナプス後細胞という。中枢神経系の多くのシナプスを占める化学シナプスでは、活動電位の到来により、シナプス前部の電位依存性カルシウムチャネルが開口し、その結果カルシウムが流入し、シナプス顆粒の開口放出を引き起こす。その結果シナプス顆粒に含まれている神経伝達物質がシナプス間隙に放出される。神経伝達物質は、シナプス後部にある神経伝達物質受容体に結合し、直接膜電位を変化させるか細胞内二次メッセンジャーを活性化する事で伝達を行う。化学シナプスは興奮性シナプスと抑制性シナプスに細分される。一方、電気シナプスは接触膜上のギャップ結合を介して、膜電位変化を直接的に次の神経細胞に伝える構造である。このように受け取られたシナプス電位が細胞体まで伝わり、軸索小丘で統合され、最終的にシナプス後細胞が発火するかどうかが決まる。この影響の相互作用を神経統合と呼ぶ。またシナプス伝達の効率は必ずしも一定ではなく、入力の強度により変化する。これをシナプス可塑性と呼び、学習・記憶の細胞メカニズムであると考えられている。
独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター
記憶は経験に基づくデータに過ぎない
この話のようなメカニズムでもって脳の内でシナプスがどのように繋がり合っているかによって、人は前向きな性質を持ったり、後ろ向きな性格になったりしてるんだよ。
ぼくたちは医学の専門知識をレクチャーするのが本意じゃないから、話を「記憶を手放して未来を切り開く」って本筋に戻すけど、このことを理解するうえでとっても大切なことは、『記憶というのは本来、経験に基づいた単なるデータに過ぎない』ってことだ。
その"単なるデータ"と"自分の意識"を混同してしまった頃から、人間は誰もが元々持ってた神性を忘れてしまったんだな。
そのようにして代を重ねる毎に、抜き差しならない肉体記憶の牢獄に自らを閉じ込めてしまったのがこれまでの地球人間だったんだよ。
(次回に続く)